第24回 2017年の夏のちょっとした出来事~天野先生のひとりごと~


 2017年の夏も思い出多き年となった。

 イギリスに留学する前にと会いに来てくれた20歳の陽太くん。本当に久しぶりに会った陽太くんなので、初めは誰だか分からなかった。「陽太です」と言われて、立派な青年の顔をしげしげと見つめてしまった。幼稚園の頃の思い出話をしているうちに目の前の陽太くんは少しずつ5歳の陽太くんに戻って、思わず抱きしめてしまった。とはいっても、椅子に座っている後ろ姿の陽太くんを、だが。抱きしめたと言うより首をしめた様な感じだったのだが。抱きしめてみて頭部の大きさにもう子どもではない陽太くんを改めて実感した。

 抱きしめられて陽太くんが何を思っていたかはわからないけれど、先生のするがままにしている姿がなんとも愛おしかった。そして、思い出話が一段落すると「何か仕事はありませんか」と言う。そして、同窓の2年生が活動しているえのき広場に手伝いに出かけて行った。

 次に会うのは2~3年後だろう。「人の役に立つ仕事につきたい。そのために自分の力をより確かなものにしたい」といっていた陽太くん。

 きっと、男前になって会いに来てくれるのだろう。それまでは、年をとっている場合ではない、私も元気でいなくてはと思った。

 

 夏休みに入ると、懐かしい人達から便りが届いた。便りの中身はー。

   残暑お見まい申し上げます。

   おひさしぶりです。お元気でしょうか。わたしは元気です。

   わたしは、あなたのおかげで、一人の人間になれました。いろいろな知

   しきを教えてくれてありがとうございます。体に気をつけてがんばってく

   ださい。                   健太郎

 

 “わたしは、あなたのおかげで、一人の人間になれました”という文面に思わず声を出して笑ってしまった。子どもたちからこれまで一度も「あなた」と呼ばれた事はないので、なんとも可笑しいのだ。そのうえ「人間になれました」という表現に「健太郎くんは、初めから人間だったよ」と今度合った時にかまってやろう。そんな気持ちで何度も何度も読んでいるうちに、だんだん心が引き締まってきて、このはがきを手放せなくなった。

  5年生の健太郎くんは、この文章をどんな思いで書いたのだろうか、自分の成長を客観的に見られるまでに成長してきているのが感じられて、なんとも嬉しくなってきたのだ。それと「いろいろな知識を教えてくれてありがとう」という文面にも、子どもたちの興味関心をどう高めるかを常に考えて来ている私にとっては、投げたボールが打ち返されて来たような心境だ。
  いま丁度、総合活動「どうぶつ」の取り組みが始まったばかりだが、「キリンはどうやって水を飲むか」「サイの皮膚はどのくらい頑丈なのか」「アフリカゾウの耳はなぜ大きいのか」「ウサギのうんちと羊のうんちとキリンのうんちの形と大きさ比べをさせよう」などなど子どもが面白がるような話をあれこれ考えている。こういう話がきっと知識の入り口になって健太郎くんには伝わったのだろう。となると、もっともっと「どうぶつ」の生態に合わせた面白く不思議な世界の話してやりたいと思ってしまう。

  子どもたち一人ひとりが、自分の目標に向って世界を切り開き、生きることの面白さと充実感を味わってくれるよう頭を活性化しておこうと決意した。