特別回 カーテンを開けると~天野先生のひとりごと~

712号室が私のいる病室。
カーテンを開けると
窓の真ん中に鉄塔が14本の送電線を両手に広げてそそり立っている。
足元には里芋の葉っぱが生い茂り
その右側の畑にはミカンの木が青く固い実をつけている。
左側に植わっている柿の木は樹齢40~50年は経つのだろうか、一抱えもある見事な木だ。
それが体いっぱいに葉を生い茂らせている。
西日のきつい病室だけれど、鉄塔の向こう側に見える空の変化に心がひかれ、 本を開いていない時は飽かずに
眺めて過ごした。

鉄塔の向こう側に虹の橋らしきものがみえる。
ぼんやりしていて今にも消えそうだが間違いない。
送電線で区切られている虹は鬱陶しげに遠慮深げだ。
何だか虹が気の毒に思われた。

木々の揺れで風の存在を知り
路面の色で雨を知る。
雲が刻々と色を変え姿を変える。
風に流れる白い雲
たれ込めた重い空
人はみな空を見上げて
何かを感じ何かを思う。

カーテンを開けると外界が動き出し
カーテンを閉めると閉ざされた病室という空間。
アンネフランクのことが脳裏をよぎる。
アンネは、窓から見える空に、雲に、雨に、
太陽に、小鳥に何を思っただろうか。

戦後70年を記念してメッセ―ジが伝えられて来る。
まさにこの時代と共に生きてきた私は何をなすべきなのか
何ができるのかと、空いっぱいの雨雲を見ながら
ベットに横たわっている。

カーテンを開けると
そこには送電線に遮られながらも
広い広い空が広がっている。

2015年8月

見学会予約・問い合わせ先
風の谷幼稚園 : 044-986-5515

  • URLをコピーしました!
目次
閉じる