第1回 30歳の教え子たち~天野先生のひとりごと~

4月8日 始業式。
久しぶりに子どもたちの弾んだ声が、幼稚園いっぱいに響き渡っています。

3月19日に修了式を終え今日までの20日間、子どもたちは春休みに入っていました。しかし、教師たちは一年間の実践検討と年度末の片づけ作業、それが済むと新年度を迎えるにあたっての準備作業と新年度の方針作りと休む暇はありません。

それでも春休みのこの時期は、中学生、高校生になった子どもたちが成長したその姿を見せに来てくれるという喜びがあります。
今年は、以前私が勤めていた幼稚園で2年間担任して今年30歳になる教え子たち7人が会いに来てくれました。
向こう側から見ると、「先生は少しも変わらない」と目に映るようですが、4~5歳の姿から時が飛んで、成人しているその成長ぶりに私の方は一瞬戸惑ってしまいました。しかし、数秒凝視していると、顔が24~5年前に戻っていくのです。
社会的にはそれなりの立場にいる人たちなのに、私との関係は胸に抱きしめていたあの頃の関係に違和感なく戻るのが不思議でした。

そのうちの一人が、私の顔を見るなり「先生、幼児期の成功体験が今の私の核になっているの。こま、あやとり、なわとび、たけうまといろいろやって来て、初めは出来なくて苦労したけれど、必ず出来るようになった。それが、私の中でベースになっていてやれば必ずできるようになるって思える自分がいる。」と言うのです。
そのあと、幼稚園の頃の話に花が咲きました。

驚いたのは、実によく覚えていることでした。年中の時にやった劇、年長でやった劇、誰がどうだったこうだったと、一人ひとりの特徴をあげて「そうだった、そうだった」と面白がります。
それから、「先生の作ってくれたおはぎが美味しかった」と言う話になり、「親たちも食べていたけれどあれは何でだったのか」と言われて思い出しました。「子どもたちが美味しかった美味しかったというので私たちにも食べさせて欲しい」という声が親達から寄せられて、最後の親子遠足の時に重箱におはぎを詰めて持って行ったことを。そして、ぽかぽかした日差しを浴びながら、神社の境内で丸くなって食べたその情景が思い出されました。

最後にみんなで写真撮影。「先生こんなに小さかったっけ」と言われながらツーショットでも撮りました。子どもたちは私の胸からはみ出してもう抱きしめられなくなっていました。

30歳の子どもたちが帰った後、一人ひとりの中に鮮やかに残っている幼児期の記憶と、そしてそれが、その子を左右しかねない根っこになっていることを知り、あらためて、幼児期にあるこの子どもたちを本当に本当に大事にし、成功体験を丹念に積み上げて行きたいと心から思いました。

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