第33回 2022年の夏 No1~天野先生のひとりごと~

 2022年の夏の暑さは半端ではない。連日33~35度の暑さだ。連日であれば少しは慣れると思いきや、一向に慣れずに汗が滝のように流れ出る。
 テレビからは、ウクライナの戦禍報道と重なって、大規模な山火事やらヨーロッパで起きている気温40度越えの報道がなされている。
 それに加えてコロナ感染も一向に沈静化する傾向にない。さらに、日本列島では、あちこちで地震が起き、 一体地球はどうなるのだろうかと底知れぬ不安感が募って来る。

 そんな中でも、風の谷の教員たちは本当に良く仕事をする。
 今日は、教室のワックスはがし。その後は通路をデッキブラシでの水洗い。それを“水遊び” と称して笑い声が響きわたる。
 その後、畑の手入れなど、汗にまみれながら作業を進めている。
 夏休みに入ってあちらこちらで目にする若い親達の子どもの存在をまるで 無視するかのようなスマホ片手の生活ぶりやスーパーや道路を歩く時などでの子どもの放置ぶり、それらに違和感を募らせることが多かっただけに、子どもたちのためにと一生懸命働く若い教員たちを見ていると「私も頑張らなくちゃ」と心が晴れてきた。

 「天野先生、お客さんですよ」と私を呼ぶ声がした。
 誰が来たのかと腰を上げたところに、職員室に入ってきたのは、剛士くんだった。小学2年生になった剛士くん。相変わらず色白で可愛い顔をしていて「良く来たね」と思わず抱きしめてしまった。
 小学1年生の妹がコロナに感染して、そのため年少児の弟もお休みが続いていた事もあってしばしの間、園には足を踏み入れられない剛士くんだったのだ。
 剛士くんの手には、小さなビニール袋が握られていて 「先生、これで苗を買って植えて下さい」と差し出された。その中には500円玉が入っていた。
 “花の中で子どもたちを育てたい” という私の思いはお母さん達にも届いており、園のそこかしこに花を咲かせてくれている親たちだが、小学2年生の剛士くんが自分のお小遣いを「花代」として持ってきてくれるとは思ってもみなかった。驚きと同時に胸がいっぱいになった。
 「ありがとう、先生とっても嬉しいよ、本当にありがとう」と言ってもう一度抱きしめた。
 もうじき 76歳になる私だが、こんなに幸せな思いができる「幼稚園の先生」と言う仕事が、この時ほど「素晴らしくて、いい仕事」と思った事はない。

2022年7月29日

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