第20回 真昼の花火~天野先生のひとりごと~

 梅の花が満開になると、桃の蕾がふっくらとして来る。
桃の蕾が日ごとに膨らみ、桃色の花びらが見え始めると卒園式。
心をこめて育てた子どもたちが、自分に誇りを持って巣立っていく姿は何よりも嬉しいことなのだが、私の気持ちには薄靄がかかる。

 別れと言うものは、何故こんなにも寂しいのか。

 しかし、2月に入ってから(卒園して)飛び立っていった子どもたちが、顔を見せるようになった。      

 先ずは、中学受験をした美羽ちゃんの合格報告。次は横浜国大に合格した友萌ちゃん。高校教師を目指している20歳になった駿吾くん。大学を1年休学してオーストラリアに留学する祥子ちゃん、アパレルの業界でアルバイトをしながらその世界を研究してみるという大学3年の大志くん。東海大学(1年)でラグビーをやっている風太くん。

 幼いころの面影を残しつつも、真っ直ぐ前を見て自分の足でしっかり歩いている子どもたちの(青年たちの)姿が、私を励ましてくれる。

 3月の後半になると、大学受験結果をもって拓くん、健くん、萌ちゃん、彩ちゃん、華ちゃん、龍紀くんが遊びに来た。高校3年の健彦くんは、お母さんと一緒に顔を見せに来た。

 連絡を受けて、お祝いに「何か作ってあげよう」と言うと「おはぎ」のリクエスト。三色おはぎを頬張りながら「おいしい、おいしい」と食べる姿は幼稚園の時そのままと言った感じだった。

 その数日後には、高校入試の結果報告に22~23人がクラス会と称して集まった。

 また、クラス会には入寮しているので来られないからと、前橋育英のサッカー部に入った詩音くんが事前に顔を出した。サッカーといえば、国学院久我山には隼介くんがいたはず。試合会場で出会ったら“風の谷の子”として声を掛け合うのだろうか、と想像した。

 「クラス会」に集まった子どもたちは、進学先の高校名を一人ひとり報告してくれたのだが、覚えていない。

 しかし、それぞれが選んだ選択理由は、彼らの進みたい“我が道”に繋がっているのが伝わって来て何とも頼もしい限りであった。

 自分の進みたい目標をおぼろげながらでも持ち、努力をおこたらない子どもたちの姿に感動した。

 「誇りを持って生きていけるような子どもに育てる」を教育目標に掲げ、自己形成を促してきた風の谷教育は確実に子どもたちの中で芽吹いている。この上ない幸せ感を味わった。

 直接幼稚園に顔を見せる事はなくとも、手紙で報告をしてくれた子どもたちも数人いる。成長の結果(途中経過)が知れて本当に有難いことだと思う。

7月に入って嬉しい連絡がきた。
 野球が好きで、ハ王子高校進んでいた陸朗くんが甲子園に出場が決まったという報告が届いたのだ。さらに福島県代表の聖光学園には陸斗くんがいる。2005年度卒園の子どもの中で2人が甲子園に行くのだ。

 そしてそれを追いかけるように、滋賀県の彦根東高校に進んだ功征くんが高校1年で甲子園を目指している。

 また、新国立劇場のオペラ「夕鶴」に出演しているのは、2011度卒園の悠くん。11月には「ラ・ボエーム」に出演するからとパンフレットを届けに来てくれた。

 この他にも、ピアノコンクールで優勝した東吾くん、ヒップホップダンスで活躍しているひびきちゃん、理大くんたちの報告が続く。様々な分野で力を発揮している卒園児たち。

 私は「真昼の花火」を見ている様な、その輝きと生き生きとした卒園生たち“若者の爆発音”を聞いている様な気持で、いま八月、園庭にいる。私は心から「みんな風の谷の子だね」とつぶやいたが、その声がみんなに聞こえたかどうか。

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