9月10日、60代最後の誕生日を迎えた。
丁度この日は、病院の検診があり4時過ぎに園に戻った時だった。
小池先生が、「新人教師の体操時の体の動きがどうも変なので見て欲しい」と言ってきた。
ここ数年、「ラジオ体操第一」をやらせると、体の動かし方が何だか変な人が出ているため、私は疑うこともなくホールに足を運んだ。
ドアを開けると同時に、トランペットの音が高らかに鳴り響き、何事が起きたのかと、一瞬足が止まった。
ホールの中には机が四角くセットされていて、その上にケーキがあった。そこで初めて騙されたことを知り、誕生祝いの席になっている事を理解した。
席に着くと、司会者の合図でハッピーバースデ―が歌われて「祝賀会」が始まった。
第1部は橋本先生のポケットトランペット演奏。
応援曲として「必殺仕事人のテーマ曲」「暴れん坊将軍のテーマ曲」「アルプス一万尺」の曲。胸がジーンとして涙が出そうになった。しかし、演奏の合間に「けっとばせーアマノ!けっとばせーアマノ!」という声が入るので、「なに?なに?」と思っていたら、それはどうも「かっとばせアマノ!かっとばせアマノ!」というかけ声のようだった。
でも、いくら耳を傾けても私には「けっとばせーアマノ!」に聞こえた。橋本先生に対して叱咤激励の上をいく強制指導をしているだけに、「けっとばせーアマノ!」の方が、私にはピッタリに聞こえたのかもしれない。
第2部は、金丸・小林・大内先生が首に袈裟を掛け、木魚を叩きながら入場し「般若心経」の読経を披露してくれた。夏休みに京都の仁和寺で研修を行った成果だ。
誕生日に歌をプレゼントされることはあっても、「般若心経」をプレゼントされたという話はあまり聞いた事がない。3人ともなかなかのものだった。
第3部は、私が最も喜ぶであろうプレゼントとして、みんなで考えたらしく、各々先生方の決意表明を聞かせてもらった。
どの先生たちも、より良い教師をめざして頑張ろうとしている姿に、何とも言えない一体感を感じて、しみじみ「私は何て幸せなんだろう」と思った。
そして最後は、私からのリクエストとして教員全員で「恋するフォーチュンクッキー」を踊ってもらった。ちょっとはにかんだ顔で踊る姿が何とも愛おしい。
3年間「痛い、痛い漬け」だった体が、3度の手術のおかげで「痛い!」という言葉から解放された。
痛みのない体は、おしみなく動き回れる体に戻り、神経は隅々までに配れる様になった。縄跳び、逆立、側転、ダンスはしないまでも、やりたいことにすっと向える軽やかさが出てきたのだ。
60代最後の一年、「高齢者」である事を忘れて子どもたちと時を過ごそうと思う。