第17回 風の谷プロダクション~天野先生のひとりごと~

 11月22日~23日の二日間、テレビドラマの撮影に園舎を貸し出した。山の中の養護施設「すみれ園」という設定だった。
 撮影隊は50人からの人数だったが、その人たちがきびきびと働いている姿は見ていて気持ちが良かった。
 養護施設と言う設定だった事もあって、5人ほど子役が必要との事だったので積極的に協力することにした。
 最近テレビに出ている子役たちを見ていて、演技のうまさに感心する半面、子どもの描き方が画一的なのが気になっていた。
 また、子どもなのに変に大人びていて、子ども時代をこんな子どもとして過ごしていいものなのかという疑問もあった。
 そこで、子どもらしい子どもとして存在している風の谷の子どもたちを使ってみたらどうかと提案したのだ。

 対象は年長児と言うことだったので、教員みんなで誰がいいかを話し合った。その結果、
⑴ 園の近くに住んでいてすぐに来られる子
⑵ 大人にも、カメラなどの機材にも動じない子
⑶ 状況を理解して行動出来る子
という線から選ぶことになった。

 声を掛けた子どもたちは、全員親から了解が取れて、2日間「登園」してきた。
 1日目の朝は、いつもと勝手が違うので少々興奮ぎみだったが、「声がマイクに入ってしまうので小さい声で話すように。それとあまり走りまわらないように」と声を掛けるとなんなくいつもの子どもたちに戻った。
 子どもたちは、「背景」あるいは「小道具」のような存在なので、台詞があるわけでもないし演技を求められることもない。それでも、その場で「絵を描いて」、とか「積み木で遊んで」と指示が出ると、自然体で動く子どもたちだった。
 指示を聞いて、屈託なく動く子どもたちは、撮影隊の人たちにはすこぶる評判が良かった。
 「子どもらしい子どもたちだ」「明るく素直で元気な子どもたちだ」「大人たちの動きに動じない子どもたちだ」などなど褒め言葉が次から次とかけられて「だから言ったでしょ!うちの子どもたちは本当に素晴らしいのです」と胸を張ってしまった。

 そんな中、「2日目の撮影時は、“今どき”の服装をして欲しい」という要望が、助監督から出された。何を言われているのか初め理解が出来なかった。なぜなら、2015年11月という今を生きて生活している子どもたちが着ている服装は「いまどき」ではないか!と思ったからだ。
 ところが2日目の撮影は、1日目の撮影場面から14~5年経った場面という設定になっていたのだ。そこでわかったのは、風の谷の子どもたちの服装は、14~5年前の服装としてはぴったりだが、“今どき”からは時代遅れの服装ということだ。
「うちの子どもたちは、これが普通なので“今どき”の服は持っていないと思いますよ」と応じ、結果、前日とは違う服装をして来ることで落ち着いた。
 風の谷の子どもたちの小ざっぱりした服装はどうも「昭和の子どもたち」のイメージとして今どきの大人たちには写るらしい。

 改めて知ったことだが撮影の大変さというのは、待ち時間が長いということだ。計画的に進行させているのだろうが、とにかく待ち時間が長い。撮影現場の人たちは慣れているせいか、淡々と自分の出番を待っているようだったが、私は子どもたちのことが気にかかってならなかった。
ところが、子どもたちは全く屈託なく、逆立、側転、縄跳び、鬼ごっこ、粘土などなど、自分たちでいろいろ遊びを考えては遊んでいて、「待ち時間」の感覚は全くなかった。

 昼食に「ロケ弁」が支給されることになっていた。「ロケ弁」と言う響きが特別な食べ物のように思え、また、俳優さんやスタッフの人と同じ「ロケ弁」が食べられるのかと思うと、期待が膨らんだ。
結果的には普通のコンビニ弁当だったが、子どもたちも「ロケ弁、ロケ弁」と嬉しそうだった。

 風の谷の子どもたちは、腹が据わっているし理解力と行動力は素晴らしい。「風の谷プロダクション」が出来るかもしれないと一人悦に入ってしまった。

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風の谷幼稚園
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